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職場恋愛の恋のはじまり

私は損害保険の電話営業をしている30代の会社員です。
勤めだしたのは20代の中頃、今では正社員の私も最初はアルバイトとして雇用されていました。

 

ビルを1フロア借り切った事務所に社員とアルバイトが合わせて300名弱、名前を知らない同僚も数多くいます。


同じく名前も知らない彼女と初めて言葉を交わしたのは、ある日のお昼休みでした。

午前の仕事が少し長引いた私は、時計を見つめ今日の昼食はどこにしようかと事務所を出ました。
既に昼食を終えたパートのおばちゃん達の井戸端会議を通り過ぎると、前から歩いてくる女性社員を見かけました。

 

上長と自分の昼食をコンビニで購入してきたのでしょう。
彼女は小さな両手に数人分の弁当と既に湯を注いだであろうインスタントスープを持って歩いていました。


正社員は仕事以外でも大変なんだな、そう思いながらすれ違った事を覚えています。

ふと後ろを振り返ると、彼女は扉の前で立ち止まり、体を左右に振ったり屈んでみたりしていました。


個人情報を扱う仕事ゆえに、事務所の扉はカードキーで施錠されています。
従業員はストラップ付きのIDカードを首下げるのを義務付けられており、両手が塞がった彼女は胴体でカードを認証させようとしているようでした。

 

その姿を見て妙に可笑しかった事と、同時に妙に放っておけなくなった私は、ほんの親切心から扉まで戻り彼女の後ろからカードキーを認証させました。
彼女ははっとして後ろを振り返り、自分の滑稽な姿を見られていた事を理解し、大笑いをしながらお礼を言っていました。

 

名前を知ったのは毎月行われる部署異動の初日、たまたま同じ部署になった彼女は私の顔を見るなりまたお礼を言ってきました。


あの日は仕事でミスをし怒られ落ち込んでいた事、下らない事で笑って頑張ろうと思えた事、好きなもの、嫌いなもの、共通点、彼氏に振られたばかりだという事、色々な話を聞きいつの間にか私は彼女を好きになっていました。

 

またある日の昼休み、コンビニ弁当を食べながら袋に入ったイルミネーションのチラシを見かけ、私は思い切って彼女を誘いました。
イルミネーション期限は今週末、土曜日にでも一緒に行かないかという私に、彼女はすでに予定が入っていると答えました。

 

その日の夜、玉砕した私が落ち込んでいると、彼女からメールが届きました。
「平日でもよければ」

 

人並のつたない告白を経て、彼女と付き合う事となりました。
社員の彼女に負い目を感じないようにする為、社員登用に志願し、今では正社員として勤め続けています。

 

よく彼女とあの日大笑いした事を話します。
あの日が無ければ、深く話す事も無かったかもしれないと思います。話さなければ好意も生まれなかったかもしれないと思います。あの日彼女に親切にして良かったと今でも深く思います。

31歳 会社員 男性



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